経営性ICPライセンスの取得条件まとめ

前回のエントリでは中国で営利目的のインターネットコンテンツを運営するために必要な「経営性ICP」について関連法を集めてみた。それを踏まえて今回は、「では結局何が要るの?」について各法令を一覧表に纏めてみる。

法令の名前 定められている内容 出典
1 インターネット情報サービス管理弁法
(国务院令第292号 互联网信息服务管理办法)
2000年9月25日施行
『営利目的のインターネット情報サービス』を行うには以下の条件を満たさなくてはいけない
1)中華人民共和国電信条例」の定める要求に合致すること。
2)業務発展計画及び関係技術案を有していること。
3)健全なネットワーク及び情報安全保障措置を有していること。
4)「付加価値電信業務経営許可証」(=経営性ICPライセンス)を申請・取得する。
5)外資および外資との合弁企業は事前に国務院情報産業主管部門より審査・承認が必要。
日本語 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_036.pdf

中国語 出典:中央政府门户网站
http://www.gov.cn/zwgk/2005-06/06/content_4424.htm
2 中華人民共和国電信条例
(国务院令第291号 中华人民共和国电信条例)
2000年9月25日施行
「付加価値電信業務経営許可証」(=経営性ICPライセンス)を取得するには以下の条件を満たさなくてはいけない。
1)複数の省・市・自治区にまたがる場合は国務院へ『多地域付加価値電信業務経営許可証』を申請
2)一つの省・市・自治区内の場合は省・自治区直轄市の電信管理機関へ『付加価値電信業務経営許可証』を申請
3)取得条件は次の通り
(1)経営者が法に基づいて設立した企業であること。
(2)経営活動従事に相応な資金と専門人員がいること。
(3)利用者に長期間サービスを提供する信用あるいは能力があること。
(4)国家が規定するその他の条件
日本語 出典:サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2000&d=0930&f=it_0930_003.shtml

中国語 出典:中央政府门户网站
http://www.gov.cn/zwgk/2005-06/06/content_4420.htm
3 中華人民共和国会社法
(主席令第42号 中华人民共和国公司法)
2006年1月施行
中国で会社を作るには、以下の条件を満たす必要がある。
有限会社:資本金3万元(=日本円で約40万円)〜
株式会社:資本金500万元(=日本円で約6,700万円)〜
株式会社の場合発起人の半数以上が中国在住であること
日本語 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_040.pdf

中国語 出典:中央政府门户网站
http://www.gov.cn/flfg/2005-10/28/content_85478.htm
4 外商投資商業分野管理弁法
(商务部令2004年第8号 外商投资商业领域管理办法)
2004年6月1日施行
中国では外資系の企業を作るための法律もある。が、現行法を見る限りは上記の会社法に準拠する形でよいようだ。
1) 登録資本金は公司法の規定に基づく
2) 営業範囲
(1)小売業:固定の場所又はテレビ、電話、郵便、インターネット、自動販売機を通じた個人又は団体が消費使用する貨物の販売及びその関連付帯サービス業務。
3) 設立地域の制限 小売業:2004年12月11日以降は地域制限なし
4) 2004年12月11日以降、外資独資企業の設立を許可
日本語 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/invest_managae.html

中国語 出典:中国法院网
http://www.chinacourt.org/flwk/show.php?file_id=93335
5 外商投資電信企業管理規定
(国务院令第333号 外商投资电信企业管理规定)
2001年12月11日施行、2008年9月10日改訂
海外の企業が中国の通信関連企業へ出資する際の規制を行うもの。次のようなことがわかる。
1)出資する外国企業は「付加価値電信業務」を扱う企業へ出資する場合、100万元(日本円で約1,320万円)以上の出資が必要。
2)「付加価値電信業務」を扱う企業に投資する場合、外国側の出資比率は最終的に50%を上回ってはならない。
3)出資する外国企業は付加価値電信業務を扱う良好な業績と運営経験を有していなければならない。
日本語 出典:新華網
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/law/222186/

中国語 出典:中央政府门户网站
http://www.gov.cn/gongbao/content/2002/content_61770.htm
6 外商投資産業指導目録
(商务部令 第57号 外商投资产业指导目录)
2004年6月1日施行、2007年10月31日改訂
『外商投資を制限する産業の目録』に小売、ネット販売が含まれる。
6) 卸売、小売取引業
(1)直接販売、通信販売、ネット販売フランチャイズ経営、委託経営、商業管理等の商業会社
日本語 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_032.pdf

中国語 出典:中央政府门户网站
http://www.fdi.gov.cn/pub/FDI/zcfg/law_ch_info.jsp?docid=88026

他にも取り扱いたい商品やサービスの種類によって別途法令があったりするようだ。また、上に挙げた法令の原典を探しているうちに見つけたのだけれど、最近増えた法令もあるようだ…。現時点で有効な法律を網羅するのは、ちょっとした業務になる気がする。また、法令レベルでは曖昧な表現も多いので、実際に中国で会社を作るときには弁護士などの責任を持てる専門家の力を借りるべきだろう。

ただ、調べた範囲でざっと見ると、この中で一番制限が厳しいのが、通信関連の企業へ中国外の資本を入れる際の制限をまとめた「外商投資電信企業管理規定」になる。最低資本金100万元、出資比率50%以下というのが、中国で営利目的の通信サービスをする企業を外資が設立する際に必要な最低ラインであり、実際に経営性ICPを申請したケースを聞く限り、現場の運用ではさらに取得できる可能性が低いようだ。

他方で、外商投資商業分野管理弁法など、法改正によって規制が緩くなったものもある。最近Googleが中国撤退に伴い各国政府へロビー活動をしているようだし、今後も法規制は変わっていくだろう。引き続き注目していきたい。

なお、本テーマの関連法及び原典を調べるにあたって、JETROのWebサイト、および2010年2月に行われた中国ECフォーラムセミナーでのNRI木ノ下健氏の講演資料を参考にしました。ありがとうございます。