中国の経営性ICP規制について準拠法を調べてみた

先日中国のICP規制について書いたところ、色々な方からアドバイスをいただけて大変勉強になった。なのだけれど、お話しを聞くうちに若干情報が混乱しているような気がしてきた。主に混乱しているように思われた部分は「最低資本金」「内資比率」。理由はおそらく、中国におけるコンテンツ規制に関連する法律が非常に多岐にわたっていること、そして度々改正されて内容が変わっていることによるものではないかと思う。
と、いうことで、2010年6月現在でICP規制を定めている中国の法律、及びその関連法を和訳したものをJETROさんなどの信頼が置けると思われるソースから引いて集めてみました。

「インターネット情報サービス管理弁法(互聯網信息服務管理弁法)」全文邦訳 出典:JETRO

http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_036.pdf
ICP規制のもとになっている法律。これを見ると『営利目的のインターネット情報サービス』を行うには以下の条件を満たさなくてはいけないとわかる。

  • 中華人民共和国電信条例」の定める要求に合致すること。
  • 業務発展計画及び関係技術案を有していること。
  • ウェブサイト安全保障措置、情報安全機密管理制度、ユーザー情報安全管理制度を含む健全なネットワーク及び情報安全保障措置を有していること。
  • サービス項目が新聞報道、出版、教育、医療保健、薬品及び医療機器等のインターネット情報サービスに該当する場合、経営許可の申請又は届出手続を行う前に、、関係主管部門より承認文書を取得していること。
  • 「付加価値電信業務経営許可証」(=経営性ICPライセンス)を申請・取得すること。
  • 外国投資者と合弁、提携を行う場合、事前に国務院情報産業主管部門より審査・承認が必要。また、外国投資者の投資比率は関係する法律、行政法規で制限されている。

以下本文より関連のありそうな条文を引用

第三条「営利目的のインターネット情報サービスとは、インターネットを通じてネットユーザーに対し、情報又はホームページの制作等を有償にて提供するサービス活動を指す。」
第五条 「新聞報道、出版、教育、医療保健、薬品及び医療機器等のインターネット情報サービスに従事するにあたって、法律、行政法規及び国の関係規定に従い関係主管部門より審査を受け承認を得なればならない場合、経営許可の申請又は届出手続を行う前に、法によって関係主管部門より審査を受け承認を得なければならない。」
第六条 「営利目的のインターネット情報サービスに従事する場合、「中華人民共和国電信条例」の定める要求に合致しなければならないほか、次に掲げる条件を備えなければならない。
(一)業務発展計画及び関係技術案を有していること。
(二)ウェブサイト安全保障措置、情報安全機密管理制度、ユーザー情報安全管理制度を含む健全なネットワーク及び情報安全保障措置を有していること。
(三)サービス項目が本弁法第五条に定める範囲に該当する場合、関係主管部門より承認文書を取得していること。」
第七条 「営利目的のインターネット情報サービスに従事する場合、省、自治区直轄市の電信管理機関又は国務院情報産業主管部門に対し、インターネット情報サービス付加価値電信業務経営許可証(以下、「経営許可証」という)を申請しなければならない。」
第十七条 「営利目的のインターネット情報サービス提供者は、国内外で株式を上場するか、又は外国投資者と合弁、提携を行う場合、事前に国務院情報産業主管部門より審査を受け承認を得なければならない。なお、外国投資者の投資比率は関係する法律、行政法規の規定に合致しなければならない。」
「インターネット情報サービス管理弁法(互聯網信息服務管理弁法)」全文邦訳 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_036.pdf

では『「中華人民共和国電信条例」の定める要求』も見てみる。

中華人民共和国電信条例」全文邦訳 出典:サーチナ

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2000&d=0930&f=it_0930_003.shtml

この法令が求めている具体的な要求は

  • 複数の省・市・自治区にまたがる場合は国務院へ『多地域付加価値電信業務経営許可証』を申請
  • 一つの省・市・自治区内の場合は省・自治区直轄市の電信管理機関へ『付加価値電信業務経営許可証』を申請
  • 取得条件は次の通り
    • (1)経営者が法に基づいて設立した企業であること。
    • (2)経営活動従事に相応な資金と専門人員がいること。
    • (3)利用者に長期間サービスを提供する信用あるいは能力があること。
    • (4)国家が規定するその他の条件

以下本文より関連のありそうな条文を引用

第8条「付加価値電信業務は公共ネットワークインフラを利用して提供する電信と情報のサービスの業務を指す。」
第9条「付加価値電信業務を経営し、業務範囲が2つ以上の省・自治区直轄市に及ぶものは、国務院情報産業主管部門の審査と批准を経て、『多地域付加価値電信業務経営許可証』を取得しなければならず、業務範囲が1つの省・自治区直轄市のものは、省・自治区直轄市の電信管理機関の審査と批准を経て、『付加価値電信業務経営許可証』を取得しなければならない。」
第13条 「付加価値電信業務を経営するには以下の条件を備えなければならない。
(1)経営者が法に基づいて設立した企業であること。
(2)経営活動従事に相応な資金と専門人員がいること。
(3)利用者に長期間サービスを提供する信用あるいは能力があること。
(4)国家が規定するその他の条件」
中華人民共和国電信条例」全文邦訳 出典:サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2000&d=0930&f=it_0930_003.shtml

「法に基づいて設立」ということは中国の会社法に準拠すると考えられる。中国の会社法も見てみる。

中華人民共和国会社法」全文邦訳 出典:JETRO

http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_040.pdf
これを見ると法律に基づいて会社を作るには

  • 有限会社:資本金3万元(=日本円で約40万円)〜
  • 株式会社:資本金500万元(=日本円で約6700万円)〜
  • 株式会社の場合発起人の半数以上が中国在住であること

が要件とわかる。
以下本文より関連のありそうな条文を引用

第26条「有限責任会社の登録資本の最低限度額は、3 万人民元とする。法律、行政法規に有限責任会社の登録資本の最低限度額についてより高い規定がある場合は、その規定に従う。」
第79条(発起人の員数)「株式会社を設立するときは、2名以上200名以下の発起人がいなければならず、そのうち半数以上の発起人が中国国内に住所を有していなければならない。」
第81条(登録資本金)「株式会社の登録資本の最低限度額は500万人民元とする。法律、行政法規に株式会社の登録資本の最低限度額についてより高い規定がある場合は、その規定に従う。」
中華人民共和国会社法」全文邦訳 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/pdf/invest_040.pdf

なお、外資系の企業を作るには別の法律もある。が、現行法を見る限りは上記の会社法に準拠する形でよいようだ。

「外商投資商業分野管理弁法」全文邦訳 出典:JETRO

http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/invest_managae.html
以下本文より関連のありそうな条文を引用

1. 登録資本金は公司法の規定に基づく
2. 営業範囲
(1)小売業:固定の場所又はテレビ、電話、郵便、インターネット、自動販売機を通じた個人又は団体が消費使用する貨物の販売及びその関連付帯サービス業務。
3. 設立地域の制限
(3)小売業:2004年12月11日以前は省・自治区省都直轄市、計画単列市、経済特区に限定。2004年12月11日以降は地域制限なし。
「外商投資商業分野管理弁法」全文邦訳 出典:JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/law/invest_managae.html

他にも海外の企業が中国でインターネットコンテンツを運用する会社へ出資する際の法律がある。こちらも見てみる。

「外商投資電信企業管理規定」全文邦訳 出典:新華網

http://www.xinhua.jp/socioeconomy/law/222186/

これを読むと以下のことがわかる

  • 出資する外国企業は「付加価値電信サービス」を扱う企業へ出資する場合、100万元(日本円で約1,320万円)以上の出資が必要。
  • 「付加価値電信サービス」を扱う企業に投資する場合、外国側の出資比率は最終的に50%を上回ってはならない。
  • 出資する外国企業は付加価値電信サービスを扱う良好な業績と運営経験を有していなければならない。
  • 「外商投資経営電信業務審定意見書」を作成し、国務院もしくは省、自治区直轄市人民政府商務主管部門に説明を行う必要がある
  • 「外商投資企業批准証書」を国務院へ持参し「電信業務経営許可証」(=経営性ICPライセンス)の交付を受ける
  • 「外商投資企業批准証書」と「電信業務経営許可証」(=経営性ICPライセンス)を持参し、工商行政管理機関で外資系企業による電信企業の設立登録に関する手続きを行う

以下本文より関連のありそうな条文を引用

第五条
(1) 全国的な基本通信サービス、または省、自治区直轄市に跨る基本通信サービスを扱う場合、その登録資本金の最低限度額を10億元とする。付加価値電信サービスを扱う場合、その登録資本金の最低限度額を1000万元とする。
(2) 省、自治区直轄市所管の基本通信サービスを扱う場合、登録資本金の最低限度額を1億元とする。付加価値電信サービスを扱う場合、登録資本金の最低限度額を100万元とする。

第六条 付加価値電信業務(および基本通信サービス中の無線呼出サービス)を扱う外資系企業が電信企業に投資する場合、外国側の投資者は企業の中で、出資比率は最終的に50%を上回ってはならない。

第十条 付加価値電信サービスを扱う外資系企業が電信企業に投資する場合、外国側の主な投資者は付加価値電信サービスを扱う良好な業績と運営経験を有していなければならない。

第十二条 外資系企業によって電信企業が設立され、省、自治区直轄市に跨る付加価値電信事業を扱う場合、中国側の主な投資者によって省、自治区直轄市の電信管理機関に申請を提出し、下記の文書を申告しなければならない。
(1)本規定第十条の規定による資格証明または関連確認文書
(2)電信条例規定により、付加価値電信事業を扱うにあたって、備えるべき他の条件の証明又は確認文書

第十五条 「外資系企業による電信企業の設立において、基本通信サービスまたは省、自治区直轄市に跨る付加価値電信サービスを扱う場合、中国側の主な投資者は、「外商投資経営電信業務審定意見書」とともに国務院商務主管部門に対し、外資系企業による電信企業の設立計画に関する契約、規定を回付しなければならない。省、自治区直轄市所管の付加価値電信サービスを扱う場合、中国側の主な投資者は、「外商投資経営電信業務審定意見書」を持参し、省、自治区直轄市人民政府商務主管部門に対し、外資系企業による電信企業の設立計画に関する契約、規定を回付しなければならない。 」

第十六条 「外資系企業による電信企業の設立において、中国側の主な投資者は「外商投資企業批准証書」を持参し、国務院の工業と情報化主管部門で「電信業務経営許可証」に関する手続きを行なわなければならない。
 外資系企業による電信企業の設立において、中国側の主な投資者は「外商投資企業批准証書」と「電信業務経営許可証」を持参し、工商行政管理機関で外資系企業による電信企業の設立登録に関する手続きを行なわなければならない。」

第十七条 「外資系企業による電信企業の設立において、多国間電信事業を扱う場合、必ず国務院の工業と情報化主管部門の同意を得なければならず、また国務院の工業と情報化主管部門が設立した「国際電信出入口局」の審査を通過しなければならない。」
「外商投資電信企業管理規定」全文邦訳 出典:新華網
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/law/222186/

長くなったのでまとめは次回に。それにしても多いなぁ…。